発達障害と食事の関係性について統計データを用いた解説

「食事を変えれば、子どもの発達障害の特性が落ち着くのでは」と考える保護者の方は少なくありません。
結論からお伝えすると、現時点で、特定の食品や食事法によって発達障害が治る、症状が軽くなるという確かな根拠は示されていません。
この記事では、よく話題になる研究を、出典とあわせて整理します。食事は治療の代わりにはならないため、気になることがあれば医師や専門の相談窓口に相談してください。
発達障害とはどんな特性?

発達障害者支援法では、発達障害を「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害」で、通常は低年齢で症状があらわれるものと定めています。
食べ方や好き嫌いで生じるものではありません。診断や支援の方針は、医師などの専門家と相談しながら決めていくものです。
食事で症状は変わるの?研究で分かっていること

よく話題になる4つのテーマについて、まとまった研究の結論を表にしました。
| テーマ | 主な研究 | 現時点での結論 |
|---|---|---|
| オメガ3脂肪酸(DHA・EPA)のサプリメントとADHD | 37件の試験をまとめたコクランレビュー(2023年) | 保護者が評価したADHDの症状全体に、偽薬との差はみられなかった |
| グルテン・カゼインを除いた食事と自閉スペクトラム症 | 6件の試験をまとめたシステマティックレビュー(2018年) | 中核症状に有益だという根拠は乏しい |
| 砂糖と子どもの行動 | 23件の試験をまとめたメタ分析(1995年) | 行動や認知への影響は示されなかった |
| 合成着色料・保存料と多動性 | 英国の一般の子ども約300人を対象にした試験(2007年) | 一部の条件で小さな影響が報告されたが、ADHDと診断された子どもを対象にした研究ではない |
オメガ3脂肪酸のサプリメントは効果があるの?
2023年のコクランレビューは、ADHDのある子ども・青少年を対象とした37件の試験を分析しました。
保護者が評価したADHDの症状全体、不注意、多動性・衝動性のいずれも、偽薬との差はみられないという結論でした。著者らは、試験の規模が小さいことなどを課題に挙げています。
グルテンフリー・カゼインフリー食はどうなの?
グルテンは小麦などに含まれるたんぱく質、カゼインは牛乳に含まれる主なたんぱく質です。
2018年のシステマティックレビューは、自閉スペクトラム症のある子どもを対象とした6件のランダム化比較試験(計214人)を分析しました。
一部の試験で一部の項目に差が報告されたものの、自閉スペクトラム症の中核症状については、例外を除き群間に有意な差はみられませんでした。著者らは、グルテン・カゼインを除いた食事が子どもの症状に有益だという根拠は乏しいと結論づけています。
砂糖を食べると落ち着きがなくなる?

1995年のメタ分析では、砂糖が子どもの行動や認知に影響するという結果は示されませんでした。
ただし、ごく小さな影響や、一部の子どもへの影響までは否定できないとも書かれています。甘いものは、虫歯やほかの食事とのバランスの面から量を意識するとよいでしょう。
合成着色料や保存料との関係は?
2007年に英国で、3歳児153人と8・9歳児144人を対象に、合成着色料と安息香酸ナトリウムの混合物を含む飲み物の影響を調べた試験が報告されました。
一部の条件で、多動的な行動の指標に小さな影響がみられています。一方で、対象は一般の子どもで、ADHDの診断を受けた子どもへの効果を調べた研究ではありません。厚生労働省の審議会資料では、使われた着色料の一部が日本では指定外添加物であることも紹介されています。
自己判断で食べものを除くときの注意点

成長期の子どもの食事から、小麦や乳製品などの食品群を自己判断で除くと、エネルギーやたんぱく質、カルシウムなどが不足するおそれがあります。
小麦アレルギーなどで食物の除去が必要な場合は、医師の診断と指導のもとで行いましょう。
毎日の食事で大切にしたいことは?

特別な食事法よりも、まずは毎日の食事のバランスです。農林水産省の「食事バランスガイド」のように、主食・主菜・副菜をそろえることを目安にしてみてください。
脂質の種類にも目を向けてみる
オメガ3系脂肪酸は、体に必要な脂質の一つです。
- 魚介類(サバ、イワシ、サンマなど):DHA・EPAが多く含まれます
- 植物油(えごま油、アマニ油など):α-リノレン酸が多く含まれます
- 種実類(くるみ、チアシードなど):α-リノレン酸を含みます
ビタミンやミネラルも不足なく
鉄、亜鉛、ビタミンDなども、成長期に欠かせない栄養素です。年齢ごとの目安量は、厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」で示されています。サプリメントを使う前に、まずは食事全体を見直しましょう。
偏食が気になるときは相談を

感覚の特性などから、食べられるものが限られるお子さんもいます。無理に食べさせるより、かかりつけ医や管理栄養士、地域の発達障害者支援センターに相談すると、そのお子さんに合った工夫が見つかりやすくなります。
まとめ

- 特定の食品や食事法で発達障害が治る、症状が軽くなるという確かな根拠は、現時点ではありません
- オメガ3サプリメントやグルテン・カゼインを除いた食事は、まとまった研究で明確な効果が示されていません
- 自己判断で食品群を除くと、成長期に必要な栄養が不足するおそれがあります
- 毎日の食事は、主食・主菜・副菜のバランスを大切に
- 食事は治療の代わりにはなりません。気になることは医師や専門の相談窓口へ
参考
- 厚生労働省「発達障害者支援施策」 https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/hattatsu/index.html
- 国立障害者リハビリテーションセンター・国立特別支援教育総合研究所「発達障害ナビポータル」 https://hattatsu.go.jp/
- 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44138.html
- 農林水産省「食事バランスガイド」 https://www.maff.go.jp/j/balance_guide/
- 厚生労働省 薬事・食品衛生審議会資料「食品添加物が児童の多動性に与える影響に関する論文の発表について」(2008年) https://www.mhlw.go.jp/shingi/2008/02/dl/s0228-8i.pdf
- Gillies D, et al. Polyunsaturated fatty acids (PUFA) for attention deficit hyperactivity disorder (ADHD) in children and adolescents. Cochrane Database Syst Rev. 2023;4:CD007986. https://doi.org/10.1002/14651858.CD007986.pub3
- Piwowarczyk A, Horvath A, Łukasik J, Pisula E, Szajewska H. Gluten- and casein-free diet and autism spectrum disorders in children: a systematic review. Eur J Nutr. 2018;57(2):433-440. https://doi.org/10.1007/s00394-017-1483-2
- Wolraich ML, et al. The effect of sugar on behavior or cognition in children. A meta-analysis. JAMA. 1995;274(20):1617-21. https://doi.org/10.1001/jama.1995.03530200053037
- McCann D, et al. Food additives and hyperactive behaviour in 3-year-old and 8/9-year-old children in the community. Lancet. 2007;370(9598):1560-7. https://doi.org/10.1016/S0140-6736(07)61306-3





