添加物とうつ病の関係性:最新研究とリスクを解説

「添加物をとるとうつ病になるの?」という疑問への、現時点での答えは**「特定の食品添加物がうつ病の原因になると示した確かな証拠はない」**です。
超加工食品や人工甘味料の摂取量とうつ病との”関連”を報告した研究はありますが、いずれも観察研究で、因果関係までは分かっていません。
気分の落ち込みが続くときは、食事だけで何とかしようとせず、医療機関や相談窓口を頼ってくださいね。
うつ病はどんな病気?原因は分かっているの?

厚生労働省によると、うつ病には気分や意欲に関わる脳内の物質(セロトニンやノルアドレナリンなど)の働きの低下が関わっていると考えられています。
怠けや気持ちの弱さによるものではなく、日本では約15人に1人が生涯のうちに経験するとされる身近な病気です。
治療は抗うつ薬などの薬物療法やカウンセリングが中心です。特定の食品や食品添加物を避けることが治療の代わりになるわけではありません。
研究では何が分かっている?
超加工食品とうつ病の「関連」

2024年に医学誌BMJに掲載されたアンブレラレビュー(既存のメタ解析をまとめて評価した研究)では、超加工食品を多くとる人ほど、うつに関する症状のリスクが高いという関連が報告されました(ハザード比1.22)。ただし、エビデンスの質は「低い」と評価されています。
超加工食品は、添加物だけでなく、糖分・脂質・食塩の多さ、食物繊維の少なさ、食生活や生活環境全体など、さまざまな要素を含む分類です。そのため、この結果から**「添加物がうつ病を引き起こす」とはいえません。**
人工甘味料についての研究

米国の看護師を追跡した研究(2023年、JAMA Network Open)では、人工甘味料や人工甘味料入り飲料を多くとっていた群で、うつ病の発症が多いという関連が見られました。
一方で、この研究は観察研究で、対象は中年女性に限られます。気分が落ち込んでいる人ほど甘い飲み物を選びやすい、といった「逆の因果」の可能性も否定できず、仕組みはまだ仮説の段階です。
なお、アスパルテームについては、2023年にWHOとFAOの合同専門家会議(JECFA)が、一日摂取許容量(体重1kgあたり40mg)を変更する理由はないと結論づけています。食品安全委員会によると、日本人の推定摂取量はいずれの推計でもこれを大きく下回っています(最大でも約0.3%)。
よく見かける説と、現時点の整理
| よく見かける説 | 現時点での整理 |
|---|---|
| 添加物が神経伝達物質のバランスを乱す | 本記事で確認した公的機関・論文の範囲では、ヒトでうつ病の原因になると示した根拠は確認できませんでした |
| 合成着色料や保存料がうつ病を招く | 同上。いずれも安全性評価にもとづく使用基準の範囲で使われています |
| 人工甘味料が気分障害を起こす | 関連を示す観察研究はありますが、因果関係は分かっていません |
食品添加物の安全性はどう確認されている?

日本では、食品安全委員会が動物試験などのデータをもとに、一生食べ続けても健康への悪影響がないと考えられる「一日摂取許容量(ADI)」を設定し、それを踏まえて食品ごとの使用量などの基準が定められています。
実際の摂取量の調査でも、ADIを大きく下回っていると報告されています。
「無添加」表示はどう見ればいい?

消費者庁は2022年に「食品添加物の不使用表示に関するガイドライン」を定めました。何を使っていないのか分からない単なる「無添加」や、「無添加だから安全・健康」と受け取られる表示などは、消費者の誤解を招くおそれがある例として示されています。

「無添加」の文字だけで判断せず、パッケージ裏の原材料名と添加物の表示を見て、何が使われているかを確かめるのがおすすめです。気になる添加物がある方も、ここで確認できます。
毎日の食事で意識したいこと

特定の食品を「避ける・頼る」よりも、食事全体のバランスを整えることが基本です。
- 農林水産省・厚生労働省の「食事バランスガイド」を目安に、いろいろな料理を組み合わせる
- 家で料理する日を増やすと、使う食材や味付けを自分で選べる
- 調味料は原材料表示を見比べて、好みの味のものを選ぶのも楽しみ方のひとつ
気分の落ち込みが続くときは

厚生労働省は、気分の落ち込みや物事への興味がわかないといった症状が2週間以上続く場合、専門家への相談を勧めています。
精神科・心療内科のほか、保健所や精神保健福祉センターでも相談できます。ひとりで抱え込まず、早めに頼ってください。
まとめ

- 特定の食品添加物がうつ病の原因になるという確かな証拠は、現時点では示されていません
- 超加工食品や人工甘味料とうつ病の”関連”を示す観察研究はありますが、因果関係は不明です
- 食品添加物は、ADIにもとづく使用基準のもとで使われています
- 「無添加」の表示だけでなく、原材料名・添加物の表示を確認しましょう
- 食事は治療の代わりにはなりません。つらい状態が続くときは医療機関や相談窓口へ
参考
- 厚生労働省「うつ病|こころの病気について知る」 https://www.mhlw.go.jp/kokoro/youth/stress/know/know_01.html
- 厚生労働省「こころの相談の窓口について」 https://www.mhlw.go.jp/kokoro/youth/consultation/window/index.html
- 厚生労働省「食品添加物 よくある質問(消費者向け)」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuten/qa_shohisya.html
- 食品安全委員会「アスパルテームに関するQ&A」 https://www.fsc.go.jp/foodsafetyinfo_map/aspartame.html
- 消費者庁「食品添加物の不使用表示に関するガイドライン」(2022年3月30日) https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_labeling_act/assets/food_labeling_cms201_220330_25.pdf
- 農林水産省「食事バランスガイド」 https://www.maff.go.jp/j/balance_guide/
- Lane MM, et al. Ultra-processed food exposure and adverse health outcomes: umbrella review of epidemiological meta-analyses. BMJ. 2024;384:e077310. https://doi.org/10.1136/bmj-2023-077310
- Samuthpongtorn C, et al. Consumption of Ultraprocessed Food and Risk of Depression. JAMA Netw Open. 2023;6(9):e2334770. https://doi.org/10.1001/jamanetworkopen.2023.34770




